主任講師 慶應義塾大学大学院 坂爪 裕 様インタビューその3|経営者に求められる「複眼的思考」とは?

MI生産・開発マネジメントコースの主任講師である坂爪 裕様(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 教授)にお話を伺いました。

日本能率協会の斎藤由佳がインタビューいたします。(以下敬称略、所属役職はインタビュー当時)

経営者に求められる「複眼的思考」とは?

斎藤
そのような環境の中、経営者はどのような判断に迫られるのでしょうか?

坂爪
消費がますます多様化する中にあって、昔と違って1つの製品で大規模な売り上げを支えられる時代は、もう来ないと言っていいでしょう。経営者は、複数の事業を持ちながら、そのミックスの中で、事業構成をどう考えていくのかという話になります。

複数の異なる事業を抱えながら、経営全体のシナジーを考えていくために重要なのは複眼的思考です。

斎藤
複眼的思考とはどのようなことなのでしょうか?

坂爪
1つの事業は30年でライフサイクルを迎えると言われるように、事業構成は常に見直しを行っていかなければなりません。一方で、自社のキードメインは何か、経営理念、中長期の計画といったものはきちんと踏まえておく必要があります。基本的なドメインという芯を通したうえで、事業、あるいはお客様に提供する価値をどう変化させつつ創造していくか、この2つを同時に考えていくことが複眼的思考です。

「JMI生産・開発マネジメントコース」の受講者の皆さんは、1つの事業でのエキスパートですから、それぞれの事業を通じて培ってきたものの見方は蓄積されているわけです。

将来、開発、生産などそれぞれの機能のエキスパートから事業部長になったときには、調達、営業など他の機能からの見方もあわせて意思決定をしなければなりません。他の立場・機能の見方で意思決定をすることが増えるでしょう。ステージが上がり、そのステージに応じて違うものの見方ができるか、それがマネジメントの力量です。

しかしそのような幅広さ、多様さを理解しながらも、自身の考えの芯はどこにあるのか、ぶれない軸は何なのかを考えていくことが重要です。意思決定には自分自身のぶれない軸が必要で、それがない意思決定は物事の整合性がとれません。

老舗企業を思い出すとよくわかりますが、老舗企業というのは、単に古いやり方を続けているのではなく、絶えず新しい考え方、価値を生み出しています。しかしその考え方のベースに家訓とか理念といった継承された軸がある、だから外から見ると伝統を引き継いでいるという一貫性が感じられるのです。

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